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「てらさわせんせい~ほけんしつのたちばなせんせいは?」

職員室前を歩いていると3年生の女の子3人が聞いてきました。

橘先生は5年生のキャンプの付き添いでいないよ。
どうしたの?

そう応えると女の子たちは3人してこちらの顔を見つめてきます。
なんだか嬉しそう?

「え~?たちばなせんせいいないの?」
「おとこのことぶつかっちゃっていたいんだって~」
「まえからいたいところがまたいたくなっちゃって~」
「ね~ね~どうしよう~?」

云々。
まぁよくしゃべります。
3人よれば何とやらは低学年でも健在です。

どうやら患者さんは真ん中のショートカットの子らしく、
どうして痛いのか聞くと、両脇の子が説明してくれるのです。

「おとこのことぶつかって~」
「ちがうよ~わざとけったんだよ~」
「それでまえからいたかったところがー」

わかりましたわかりました。ぶつかって痛いんですね?
場所は……腰?
前から痛いのはどうして痛かったの?

「それもがっこうでぶつかってー」

やんちゃな男子の名前が出たのでなるほどと飲み込み。

じゃあ湿布かエアーサロンパスかなぁ。
職員室にはこのスプレーしかない。
どっちがいい?どっちも一緒だけど?

「しっぷ…」

じゃ保健室いこう。

大きめの湿布がきれていて探すのに手間取りながらも見つけだし、半分に切って、どこらへんが痛いの?と聞けば。
するすると服をたくしあげ、ショートパンツも、下着も、かなり際どい所まで下げて。

ここ?…こっち?

ふるふると頭をふれども決してこことは言わないショートの子。
下腹がぽっこりかわいくふくらんだ、さくらたんよりも見事な幼児体型をいちいち手でこのへん?と触れるのは、場所が場所だけになんだかイケナイ行為をしてるみたい。
心なしか当人も頬を少し赤く染めてはりますし。

ここ?

「うん…」

貼ってやると、ありがとうございましたとお礼を言って3人組は歩いていきました。

「ね~よかったね~」
「てらさわせんせいメガネしてなかったね~」
「ふふっ♪」
「メガネしてないてらさわせんせいも……」

なんて、語尾は聞き取れませんでしたが、ショートの子含め嬉しそうに去っていきました。
もしかして私、一部には人気だったりするのかな?

なんてにやにやしながら後片付けしてる時、視界に違和感。
私が向かっている白い整理棚、そこに納められている保健室によくある銀色の円柱型、消毒綿を保管する容器。
映った像はみまごうことなきさくらたん。

ただひとつ違うのは。完全におかしいのは。

「さくらだけって、言ったのに」

見間違えるはずのない。
ぎょっとするほど真っ青な顔でゆっくりとそう口を動かした銀色容器に映るさくらたん。
景色に対して真っ逆さま床上30cmほどに浮かんで静止。
手は腰の横、逆立ちをしている訳でもなく、しかし長い髪も重力に引かれることなく、ただただ逆さまに、居る。

振り返ると広い保健室にさくらたんの姿はありませんでしたが、心臓の鼓動はしばらく収まりませんでした。

その夜、さくらたんから電話がかかってきたのでその話をしてみたところ。

「あ、それはさくらの生霊だと思う」

へっ?

「あなたの事を思うばかりに」

ごぼり。

「さくらの魂は身体を抜けて」

ごば。ごぶ。

「魂だけがあなたのところへと」

ごぼ。がぶごぶっ。

えと、さくらたん、よく聞き取れないんですが。
それにこの音。
お風呂に逆さまに沈めた洗面器から漏れる空気のような、一体これ何の?

「湿布…」

ごぼごぼ。ごばがぱっ。

はい?

「さくらだけだって、言ってくれたのに。」

がばばっ。がばっ。

はい?いやさくらたん、お昼のは単に湿布貼ってあげただけで。

ごぽり。
そこで止まった水?の音。
聞こえてきたのは受話器からでなくクリアな生音。

「じゃあどうして部屋にその娘がいるのよ」

え。

振り返った私が最期に見たのは真っ逆さまなさくらたん。
「それ」に行き会った瞬間、私の命の灯は掻き消えた。

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もうすっかり秋の空ですね。空が高くって。うろこ雲。
今日はきっと良い夕焼け見れますよ。

「もう秋なのかぁまだ暑いのに。あとちょっとなのね」

そうですね。
修学旅行が終われば卒業アルバムだってほとんど完成みたいなもんだし。

「ぶー。まだ2月に遠足あるもん。こういちと離ればなれになるのは嫌だもん」

まぁまぁ、それだけ大人の階段登ってるってことじゃないですか。
さくらたんの精神年齢普通じゃないと思いますけど、
中学校の生活だってさくらたんの発達に大事な経験なんですよ?

「違う違う。そんなんじゃなくて。
さくらがいないと、こういちクラスの子に何するかわかんないし」

えーと。そんなこと、しませんよ。大体小学生に何かしたら犯罪です。

「……あんたさくらに散々その何かをしてるくせに」

や、それはそれ。さくらたんだけですよ。対象にしてるのは。だから大丈夫。
それに、やだなぁ!私はさくらたん一筋なのですよ!?

「こういち、今さくらが卒業したらお仕事中はバレないって、思ったでしょ」

……えっ、あ、いや、そんなことは。

「ま、いーけどね。目なんてどこにでもあるんだし。
こういちはさくらに見られてない瞬間なんてないのよ」

例えば、そう言って指さしたのは烏。

はたと気付いたシルバーウィーク最終日の出来事。
一緒に行ってないのに、失せ物を手渡してきたさくらたん。
やっぱり、あれはさくらたんの仕業…?

恐る恐る表情を伺うとさくらたん、含み笑いで言ったのです。

「勘違いしないで。烏とか、黒猫とか、そばにいるとかいないとかは関係ないのよ?」

……。

「なによ。そんな顔しないで。さくらのことだけ見ていてくれたら、
こういちはこれから先の人生も何も変わらず平穏に生活していけるんだから」

恥ずかしそうにちょっと頬を赤らめ私の左腕に寄り添うさくらたん。

「ずっと、一緒だよ?」

私はデジカメを取り出して、黄昏前の空を1枚だけ撮りました。

カラス

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「すごい渋滞」

ですね。もうほんとに、何しに来たのか。

「ずっとこのまま、もっと混んでてもいいな」

え。

「私は、てらさわ先生とこうしてお話できたら、混んでるのもいいなって。
あ、でも帰りもこんな混んでたら。遅くなっちゃったら門限、間に合わないかも」

……それは申し訳ないですね……家に電話してはどうですか?

「言い忘れてたけど泊まってくるって?」

なんてすいすいと言う彼女、私の同僚今年採用されたばかりの若い先生。
それはどういう意味なの?もしかして、そういうこと?
もともと泊まるつもりだったなんて家に連絡して、
その、このまま車で、お城のような、建物に行って、おーるろんぐないと。
むは!あんなことや!こんな!ことも!?

なんだか興奮してきたせいか、暑くなってきました。
おかげか、眼鏡が曇ってきました。クーラーはきいてるけどそれほど寒くない。
雨も降ってない。なのに曇る。おかしい。前が見えない。
そんな体温あがるほど興奮してる?
ここは悟られてはいけません。さりげなく話題をずらす。焦らすのです。
これ、さくらたんから教えてもらったオトナの方法。

窓でも開けましょう。はぁ良い空気。

眼鏡を外して左手でつまみ、右手の甲でちょっと目をがしごし。
その手から彼女ひょいと眼鏡をとりあげ。
少し充血した目で助手席を眺めると彼女顔はまっすぐ前向いて、
かわいらしいおててはスカートから覗く柔らかそうな大腿の上で軽く組んでいて。

あーそうか。そうゆうつもりですね。
これはそういう遊びですね。

しばらくして。

ってメガネないやーん!
……ちょっと眼鏡返してください。もういいでしょう?
今は大丈夫ですけど道が空いてきたら眼鏡、ないと運転できないじゃないですか。

「えっなんのこと?」

いや、眼鏡さっき取ったじゃないですか……。

そこまで言って気付いた私、とぼける彼女本当に知らないような顔付きで。
こんな顔演技でする意味が類推できません。
落としたのかな、と見回してみましたがシートの下、助手席はもちろん、
後部座席にも私の眼鏡、落ちてるなんてことはなく。

「窓から落としたのかな?」

や、でも落とさないように左手で眼鏡外したし、そんなことは……。

結局、眼鏡は見つからず、免許のない彼女に運転してもらう訳にもいかず
なんとか帰って来られたという思いだけでくたくたになってしまい、
彼女を送るのも眼鏡なしという何だか微妙に気まずく気味悪い空気になって
何とも後味の悪い最後の連休になってしまいました。

連休明け。
あ、そうだ出先で眼鏡屋さん探して買えば良かったんだとか
通勤途上に思い出して、ああ、なんて鈍いんだ私の脳みそ!
その瞬発力あの時に発揮していたら!
と、頭を抱えながら登校すると学校で会うなりさくらたん、

「おはようこういち。はい、眼鏡」

なんて言って渡してきた眼鏡は、紛れもなく昨日かけていたもの。
驚く私何も言えず突っ立っていると。
感情の読み取れない笑顔のまま、くい、と腕を引っ張られ耳元で

「火遊びはほどほどにね」

それだけ言うとたたた、と駆けていきました。

眼鏡片手に立ちすくむ私。
そんな、最高に後味の悪い後日談。

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さくらたんは私こういちが勤めるところの小学校に通う6年生の女の子です。

「ねぇこういち?そろそろ遊んでくれてもいいじゃない?」

はい、ま、そうですね。
でも仕事してるし……今、ノッてきてるとこだし……。

「気分屋のこういちだからそれは理解してあげたいけどさ。
おでかけで徹夜開けかなんか知らないけど昨日1日ほとんど寝てたし。
さくらが生まれる前の時代の人型兵器なんて知らないし。
今日も朝からずっと作業してて、もう昼過ぎだよ?
夕方まで遊んでくれてもいいじゃない、ね?ほら」

ちょ、さくらたん、膝の上に座っ、前が見えないじゃないですか!?

「ねぇ、さくらのことだけ見てよ?」

机の上を見ようとするとさくらたんの鎖骨あたりが視界になって。
グレーとオレンジのキャミソール2枚重ねが作業中断を要求します。

「ねぇねぇ?この期に及んでまだ仕事するつもり?目、閉じなさいよ?ま、開いててもいいけど」

言うなりさくらたん唇を合わせてきて。

「んっ、ちゅ、んむ、ちちゅっ、んちゅ」

こうされるとリアクションとしては応じない訳にいかない訳で。

「……遊んで?ね、おでかけしようよ。……さくら、こういちとおでかけしたいなぁ」

唾液を拭き拭き言ってるさくらたんもぽやーっと上気した顔付きで。
頬染め抱きついてきて肩なんかくりくりと指でいじってくるのです。

「ね、行こう?」

……はいはい、わかりましたよ。仕方ないですね。

「やったっ!40秒で用意しな!」

……さくらたん生まれる前のネタを……。それ分かる子いるのかなぁ。
ところでさくらたん、夏休みなのにほとんど毎日来てて、クラスの子なんかと遊ばないのですか?

「ん?友達とも遊んでるよ。でもいちばんはこういちに決まってるじゃない。
いいからホラ、さっさと用意しねぇかオゥ早くしろよ今すぐしろ」

ちょっとちょっと!?そんなところつかまないでください!

「早くしないと握り潰しちゃうぞ☆」

何かわいく言ってるんですか!?って、徐々に力入れてません!?
わかった、わかりましたから離してください!

「さくらとキスしてぇ……こんなにおっきくしちゃってぇ……いやん、こういちのえっち☆」

棒の方も離してください。
もういいですから、早く行きましょう。

「最初からそうしておけば良かったのよ」

……。
予定通りというか、さっきまでの表情とうってかわって平然と準備、
荷物まとめて、立ち上がり、何事もなかったかのようにドアの前で行こうよという姿をみて。
全く、さくらたんらしいと言うか、女って……。

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私は頭痛持ちです。

週に1度程度の頻度ですが、これがかなりタチの悪い頭痛で
一旦頭痛を感じると本当に文字通り動けなくなってしまいます。

市販の鎮痛剤が効くのでそれほどでもないのかもしれませんが
その鎮痛剤も習慣性のためか効かなくなった商標もいくつかあります。
少し前から愛飲している頓服も2回目から効き始める事が多くなっており
次にどの薬にしようか今は決めかねているといった所です。

そういった状態でもキーボードを前にしているのは、
薬が効いていたせいもありますが、さくらたんの訪問にちょっと驚かされた為。

「……こういち、しんどいの?」

……やぁ、さくらたん。見ての通りです。
入ってきたの、気付きませんでした。

「また、頭痛?」

私、答えられず。
頭蓋がこの自室全体の大きさに感じる錯覚。
そこに風が、いや空気の流れが起こる度に激痛を与える自覚。
触覚や痛覚が存在しない脳が鉛のように感じられ。
自分の脈や鼓動がいちいち苦痛を与えることによる苛立ち。
特に、後頭部に質量のないハンマーで殴打されているかのような痛み。
さくらたんからの問いかけに呻きでもって応えたのかどうかそれさえもはっきりしない。
そうだ英語ではこんな苦痛の事を特別な単語で表現していましたっけ。
精神的な耐え難い苦痛を表現する際にも用いる……そうだ、こんな時にぴったりの表現、えと、なんだっけ。
だめだ思い出せない。

現状はハッキリ把握できる。

思考が、ままならない。

「さくらが、替わってあげられたらいいんだけど」

小さな胸に抱かれたのを自覚します。

「よしよし、こういち、よしよし」

さくらたんの心臓の音。自分以外のリズム。

「こんなところじゃなくて、ちゃんとお布団で寝た方がいいよ、ね?」

促されてよろよろと、四つんばいでベッドへどさり。
心臓が止まりそうな激痛。

「お台所には薬の袋があったから、もうお薬は飲んだのね?」

そう言ってハンカチを取り出して汗を拭いてくれるのです。

「大丈夫、すぐに良くなる。大丈夫。大丈夫」

髪をなで、額や首筋の汗を拭いてくれます。

「よしよし、大丈夫。大丈夫。さくらが、治してあげる」

うつぶせに寝ころんだ私の肩、首、背中と軽くマッサージ。
ああ、気持ち良い。
痛みを堪えるためか抵抗するためか、筋肉が収縮してしまっているようです。
緊張を意識できたためか薬が効いてきたからかマッサージのためか、
だんだん緊張が解けてきたように感じ。
大丈夫、大丈夫、と繰り返す声が呪文のように小さく響きそしてだんだん遠くなり。


私は眠っていたようです。
目覚めるとさくらたんは崩した正座のままベッドに突っ伏したまま眠っており。
起きあがる。頭痛はもう消えていました。
顔が冷たい。
気温のわりに涼しく感じていたのはさくらたんが氷枕を用意して敷いてくれていたからでしょう。

小学生でもやっぱり女の子。母性本能ってすごいですね。
6時間あけなければならない頓服を2時間で飲んだので
さすがにもう効いてくるはずだったのでしょうが、
さくらたんに看病されて治ったような後味。


愛おしい、と思ったけれど、見ると時計は19時30分。
余韻に浸る間もなく、慌ててさくらたんの家へ電話して送ってきました。

本当はこういった日は疲れているので早めに寝てしまう事に決めているのですが
母親に看てもらって安心して眠る子供のような自分を認めて、とにかく、何か残しておこうと打ち込んでおります。

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