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ある旅先での夕餉
そこでは珍しいものが食えるというので皆で行った。

巨大なテーブルの上に並べられたのはやたらに赤い身体をして虚ろな目線をさ迷わせた屍体。
ある者は皮膚を削がれ肉を剥き出しにして絶命していた。
生きたまま焼かれた者などは、目の水分がなくなってしまい、
白目のなくなった黒目ばかりを晒していた。

私は脚を引き千切り腕をもぎ取り噛り付いた。
となりでは母が爪を剥ぎ指を裂いて身を喰らっていた。
姉は身体に噛み付いて直接咀嚼していた。
顔を上げるとよだれがだらだらと垂れた。
体液さえ一滴も残さず吸い尽くそうとする父は、とうとう頭蓋を割り脳奬を掻き出して喰らっている。

「やっぱりミソが1番だなぁ母さん」

「ミソなんて下手物じゃない。やっぱりあたしは腕がいいなぁ。
あのばきっとへし折る時の感触がまた気持ち良いのよね」

「あらあらまぁまぁ、ミソもなかなかおいしいと思うわよ~。
臓物の味がわかるようになるのは大人になってからねぇ」

「あ、じゃあ父さん、こいつの頭割っちゃってよ」

「よしきた。はい。ここをこうして…ミソを喰うにはだな。まず口を開いてだな。
顎関節を一気に千切り取る」

がしゅっ…とやや小気味よい音が響き下顎は上顎と永久に離れ離れとなる。

「その裂け目に指を無理矢理入れてだな。ちょっと力をいれれば」

がぱっ。

これは頭蓋内の僅かな空洞が出す音か。

「やり方さえつかんでしまえば大して難しくはないんだ。ミソさえ食えたらそれで良い訳だからな」

得意そうに姉に頭蓋(上半分)を渡す父は自分のした事を罪とも思っていないようだ。
私もやってみた。
脳が露出する瞬間のがぱっとゆう音は不快だったが確かに力がなければできない事ではない。
しかしミソの味が味蕾を刺激するにつれそんなことは忘れてしまっていた。

旨かった。

皆、腹が膨れるまで何体でも食べ続けた。
kani.jpg

 






 

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