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今日はさくらたんと言い争いしました。
理由は思い出せません。
他愛のないことです。
ほんと、たいしたことない口喧嘩なんですけど、お互い売り言葉に買い言葉で熱くなっちゃって。
取り出してきたはささやかな刃物。刃渡り十数センチの果物ナイフ。
身体だと致命傷になる、それくらい分かってる。
だから足にしたのに。
根本まで深々と刺さったナイフ。
脅かそうとしただけのつもりだったのか、或いは向こうがそのつもりで間合いを詰めたのか、今では全く思い出せません。
それよりまずい。
抜けない。
本当に刺すつもりなんかなかったのに、こんな小さなナイフなのに、抜けない。
焦る。
焦る。
抜けた!
あっだめ抜いちゃだめだった!
こんな事も忘れるなんて!
だめだ!だめだ!
止血!
長いタオル!バスタオル!
嘘みたいに吹き出す血、傷口、力の限りきつく縛ったけれど。
縛りすぎで組織が壊死するリスクより、止血のメリットを選んだはずなのに。
呼んだ救急車到着する前に、さくらたん失血ショックで脈も止まってしまって。
私にはどうすることもできない無力感。
思い返すは分岐点。
口論の時、私が折れていれば。
普段暴力なんて振りかざさないのに、ナイフなんて持ち出さなければ。
刺してしまった時、抜かなければ。
さくらたんは、私のはんぶんだった。
かけがえのない半身だった。
結局、私が殺したのは私自身だ。
昨日見た夢
私こういちは兵士。
艦隊射撃や航空機による対地射撃が望めず、非戦闘員がいる区画を
制圧されながらの自国での市街戦で攻防となっている情況で。
圧倒的不利の情況も味方が相手の補給路を断ったことにより、
長い消耗戦の後押し返すタイミングを皆が今か今かと待っている精神状態。
中には区画的に我が家を攻撃しなければならない者もいるだろう。
中には制圧当時区画内に恋人がいた兵士もいるだろう。
私だってそのうちの一人だ。
ただ敵国スポークスマンによると男以外の戦死者はほとんどいないとのこと。
情報の真偽を疑う気持ちはあるが、身内の無事が氏名で報じられる安堵感と、
人質を交渉要件とし盾とする条約無視の敵国の卑劣さと、
そこまで簡単に制圧された自分達の不甲斐なさへの憤りが両立する。
いつしか隊の中に同じ境遇で精神的に不安定な兵士達に激しい親近感が募っていた。
そうこうしている間に攻撃作戦中突破出来るならしても良いという作戦が追加された。
私たちは正に乱舞したい気持ちだった!
今までは深追いせず出て来た所を叩くというフラストレーションの溜まる作戦ばかりだったのだ。
作戦は夜だったがそれまでゆっくりと休めた者が何人いただろうか。
なんと時間の経つのが遅いと感じたことか!
西野も谷口もきっと私と同じように自分が突破するんだと意気込んでいたに違いない。
だがその時はあっさりとやってきた。
死に物狂いに抵抗していた敵国兵士にはもはや残弾尽きたと見え、
攻略ポイントは私が撃破したものも含め3つ。
これは誰が見てもGOサインだ。
撃たれた谷口は応急処置だけで再合流し、西野は補給を受けて最前線に飛び出している。
ここまで電撃的に作戦が進んでいれば、敵も人質に構っている暇などなかったろう。
地理的にも正面突破が可能であり必要だ。
虎の子のロケット砲でバリケードを吹き飛ばし、一気に制圧、掃討する。
かくして作戦通り突破し、私の援護で1番最初に突入したのは西野だろう。
やった!やりやがった!
ちょっと強引だったが中から銃撃の音が間断なく聞こえているところを見ると健在のようだ。
やりやがった!
私は小躍りしたい気分だった。これで一気に形勢が傾く。
皆次々と突入していく。
私は7番目だろう。
突然銃撃の音が聞こえなくなった。
敵狙撃兵は無力化している模様。残弾が尽きたのだろうか。
簡単に突入できた。
しかし私が入ってすぐ銃撃の音は止み、代わりに悲鳴が聞こえてきた。
この残響は奥にある聖堂から聞こえてくるのだろう。
怪我をしている谷口が私を押し退け全力で駆け出す。
声の持ち主に心あたりでもあったのだろうか。
悲鳴に鳴咽、絶望、怒りが混じりだした。
広い通路は恰好の狙い撃ち地帯だ。
先行部隊の状態を把握できないままここを行くのはかなり危険だ。
だが足が止まらなかった。
確かに、殺意や気配はなかったが。
それだけではない何か急がねばならない理由があるように思えたからだ。
そこにいたのは。
置き去りにされた人質たちだった。
五体に何かプロテクターのようなものを着けられて右往左往している。
よく見ると足はふくらはぎを手は指先までを、頭は首から眉毛上を覆うジェット型のヘルメットのような
樹脂製であろうかツヤのあるプロテクターは、拘束具にもなっているらしく簡単に外せない。
と、そこまで私が認識した刹那。
熱い、と誰かが叫んだ。
なんとかして、助けて、熱くて死にそう、そんな声が次々聞こえ出した。
女の声だった。
よく見ると人質たちはみな女だと解った。
そしとその拘束具が発熱しはじめているのだということも。
緩やかに炎を発している拘束具もあるようだ。
まずい。
爆発するかどうかは不明だが早く拘束具を取り除かなければならない。
足早に広い聖堂を駆ける私は、敵の応戦を警戒する以上に、
人質に自分の家族を探している自分を認識していた。
しかし私はもっと悪い事実を認識してしまった。
拘束具は恐らく外そうとすると発火炎上するのだろう。
真っ先に突入した西野が対面している人質の炎が最も大きかったからである。
写真を見せてもらった事があるが、生きたまま徐々に焼かれている彼女が
私が写真に見た恋人なのかはもはや解らない。
絶えず悲鳴を上げていた彼女は、肺に烙けた空気を吸い込んでしまったのか声はもう出ないのだ。
ただ亡霊のようにさ迷い転んでは起き上がり、また転び。
西野は完全にパニックになっていた。
ライフルは肩紐から完全に外してしまって投げ出してある。
何か名前を喚き散らしながら火炎に包まれた人型を追いかけている。
眼球も炎による高熱でやられてしまったのだろう。
西野が取り付いては何もできず彼女がのたうちまわりまた西野が追いかけるという、とめどない悲劇。
やがて倒れ込んだまま動かなくなる炎の塊の前にひざまづき絶叫する西野。
こういった悲劇が広い聖堂のあちこちで起こっているようだった。
勿論私の家族も例外なく。
14になる妹がこの拘束具の集団にいるのを見つけた時、私は気が狂いそうだった。
突入した隊員数からするとこの情況では、態勢を立て直さなければ皆殺しだという
考えはもう頭の片隅に存在しただろうか。
お兄ちゃんこれはどうせ時限発火するの、妹はそう泣きながら言った。
死にたくない、死にたくないよ!
あちこちでこんな啜り泣きが聞こえる。
私は。
私は。
気がつくと私も西野と同じようにライフルを放り出し妹の手を取っていた。
見たことのない装置だ。
繋ぎ目さえないように見えるつるんとした樹脂。
工具が入る隙間さえないように思える。
こうやってまごまごしている間に西野の彼女は焼死してしまったのだろう。
爆発物の処理に長けている人間でも解除が可能かどうか。
一体なぜ。
どうしてこんなことを。
粘っていたわりにはあっさりと突破を許して……。
時間稼ぎか。
やられた。
聖堂での応戦がない所をみても間違いないだろう。
妹は汗だくで私にすがりつき、震えている。
発熱しているのだ。
熱いよ、お兄ちゃんなんとかして。
その言葉が私が妹の命を左右するんだということを激しく主張していた。
最悪両手両足は切断するか?
そうも考えたが首と頭部をつなぐ拘束具をどうすべきか私には見当もつかなかった。
戦略的にも、戦う目的としても「敗北」その2文字は、とても、重たかった。